学生時代はどのような分野を学びましたか?

大学の理学部で植物生理学を専攻していました。植物生理学とは、平たく言うと植物の仕組みそのものを分析したり、植物の生態を解明する生物学の一分野です。

農学部のように土に植わっている植物を対象に観察していくのではなく、研究室の蛍光灯の下で育てた植物からタンパク質やDNAを採取して研究したりする「ザ・理系」の研究畑で、研究を通して環境ストレスに強い植物品種を開発したり、農作物の収量を向上させたりと、農園芸のさまざまな場面で寄与していく分野です。

私は主に、葉っぱの表面にある水や空気の出入り口となる気孔の動態について研究をしていました。気孔の動きは光合成とも密接に関わるので、その動きや仕組みを解明することで、どうすれば植物を大きく元気に育てる環境を整えられるかというところにつなげたいと考えていました。

どういうきっかけで植物生理学を学ぼうと?

祖父の趣味が園芸で、小学校の頃から家庭菜園を手伝ったりお花を植えたり、植物が身近な環境で育ったのと、もともとオタク気質な性格で(笑)、物事を解明して理解することが好きだったんですね。なので、進路もごく自然に動植物の研究ができる学部を選んでいました。ただ、カエルや昆虫を研究するのは苦手だったので、初めは消去法で植物の研究を始めたというのが正直なところです。

でも、研究していくことで技術的にできることが増えていくのが楽しかったですし、どの分野でも、研究というのは世界で最初に論文を発表することに意義があったりするので、そのスピード感というか、プレッシャーが逆にやりがいになって、大学院まで研究を続けました。

社員の声01-2

研究と同じぐらい人が好き
より社会に近い場所を求めて就活を開始

そのまま大学で研究を続ける道もあったと思いますが、就職の道を選びました。

大学院からさらに博士課程に進む選択もあり悩んだのですが、自分は研究と同じぐらい「人が好き」なんです。星座が好きなこともあって、大学では天文学サークルに所属して、ボランティアで子どもや家族連れの方たちにプラネタリウムの解説なんかもしていて、そこで喜んでもらえる瞬間がうれしくて。
博士課程に進んで1人で研究を突き詰めるより、自分が好きな「植物」と「人を喜ばせる」の両方をつなげたいなという思いが強くなっていきました。

それと、理学部の研究では新しく発見できることも多いのですが、基礎研究すぎるゆえにそれが実社会で役立つまでの道のりがとても長いのです。自分一代の研究では完結しないような世界。

であれば、もっと人や社会に近い立ち位置で、これまで研究してきたことや、これから学ぶことで社会貢献できるやりがいや実感が欲しくて、就職活動を始めました。

社員の声01-3

縁もゆかりもない土地での就職
背中を押してくれたのは、キャリア相談のような最終面接

就職活動ではどのような分野で仕事探しを?

植物関連の企業を中心にいろいろと探しました。種苗会社はもちろん、農薬系の会社や農業関連の会社まで。

就職活動をする中で、例えば野菜の種苗会社だと、品種開発以外に肥料部門があったり生産設備の部門があったりすることが多く、入社したからといって必ず植物そのものに関われるとは限らないということも見えてきました。また、種苗の流通だけをしている会社も多く、そうした企業では研究部門がなかったりもします。

せっかく大学院まで植物の研究を続けたので、やはりそのスキルを活かしたい想いがあったので、自社で研究部門をもっていること、どの部署に配属になっても植物そのものに関わることができることが、企業選びの基準のひとつになりました。

ハクサンはその両方を満たしていたと。入社を決めた瞬間を覚えていますか?

とてもありがたかったのが最終面接でした。部屋に入ると取締役の方が全員と私一人。最初はとても緊張したのですが、話しはじめると、とても親身に話を聞いてくださって。

キャリア相談のような雰囲気で「今はどういう研究しているの?」ということから始まり「どういう部署に興味があるの?」とナビゲートするように希望を引き出してくれました。それに応えていく過程で「今そういう研究をしているのだったら、こういう部分を経験してみるのも良いのでは?」など、自分でも気づかなかった可能性を示唆してくれたりしました。

具体的にはどのようなアドバイスを?

大学院までは蛍光灯の下でしか植物を研究してこなかったので、農場で実際に土に植わっている植物に接したり、培養だったり、実際に商品になる植物を育てる経験をしてみるのはどうか?とか、エンドユーザーのリアクションがダイレクトに見える企画部もあるよなど、いろいろな角度で意見を頂けて、入社後にやりたいこと・できることのイメージがしやすかったです。

入社してから一方的に配属が決まるのではなく、キャリアに寄り添って考えてくれた。

そうですね。私は実家が福岡で、大学は山口だったので、知り合いもいない愛知に引っ越して就職することに正直不安もありました。でもそこで、初めての土地へ飛び込む決意をさせてくれたのも最終面接でしたね。

社員の声01-4

出荷前に病気の植物を見つけたい!
大学と共同研究へと広がるフィールド

現在は研究開発部の培養研究課で活躍されています。

研究室では係長と私、派遣社員の方の3名に加えて、9名のパートさんが在籍しています。パートの皆さんも熟練の方達ばかりなので、とても頼りがいがありますね。

現在私は主に、培養や病理検定の研究を担当しています。
培養についてはこれまで全くやったことのない分野だったので、就職してゼロから教えていただきました。直属上司である係長は、大学院まで培養を研究されていたエキスパート。とても丁寧に教えてくださるので、嫌な焦り方をすることがありません。

培養の仕事とは具体的に何をするのですか?

寒天に植物を植えておくと、それが1ヵ月ぐらいでモコモコ増えてくるんです。その子たちをメスで切り分けて植えると、同じ遺伝子をもったクローン苗ができます。それを自社農場で土に植えて育ててもらい、生産者さんに供給するプラグ苗などになります。培養がうまくできないと、それ以降の植物の生産ができないので、種苗会社の仕事のはじまりを担う責任を感じつつ、それが悪いプレッシャーにならないように、上手くコントロールしていただいて働けています。

もうひとつの病理検定の仕事とは?

病理検定では、見た目は元気でも実は病気にかかっている植物を見つける研究をしています。ここ1年ほどは大学とも連携して、大学に出向して教授や学生さんと一緒に実験をしながら共同研究を行っています。大学時代にしてきた研究の経験も役立ちつつ、病原菌を扱うのは初めてでもあるので、スキルを生かしたチャレンジ領域としてやりがいを感じています。

まだまだ研究途中ですが、コロナ検査でも知られるようになったPCR検査を用いて、見た目では分からない病気にかかっている植物を、出荷前に選別できるようになるのが目標です。

研究室にこもりきりのイメージもありましたが、外に出ることも多いのですね。

部長が本社勤務なので、週に一度はミーティングで本社に来ていますし、共同研究をしている大学にも出向きますし、研究室にこもりきりということもなく、バランスの良いサイクルで働けています。残業も月に10時間程度で、ワークライフバランスもうまくとれています。

働きだして1年、うれしかったことは?

実際に私が作成した資料を営業さんが持って歩いてくださり、生産者さんに「この部分に気を付けてくださいね」と営農指導をしていただくこともあり、そういうお話を聞くと、自分の研究が人の役に立っている手応えを感じられてうれしいですね!

社員の声01-5

性格はオタク気質?
博物館で作品説明を1日読み続けることも

ご自分はどんな性格だと思いますか?

さっきも言いましたが、結構オタク気質でのめり込みやすいと思います(笑)。

広く浅く趣味があって、美術館や博物館も好きで休日に行ったりするんですが、作品の説明キャプションなんか1日でも読んでいられたりします。

社員の声01-6

あと漫画や小説も好きで、漫画はジャンプを愛読しています(笑)。呪術廻戦やチェーンソーマン、HUNTER×HUNTERとか、ちょっと設定がややこしくて何度読み返しても新しい発見がある作品が好きですね。

愛知に引っ越してきたばかりなので、休日は一人の趣味に没頭することが多いですが、早くプライベートでも愛知に馴染んで、仕事も私生活も充実させていこうと思います!他県からの就職を不安に感じている方も、ぜひ一度トライしてみてくださいね!