花や植物に関わる仕事に興味があるけれど、「具体的にはどんな仕事があるのかよく分からない」「自分に向く職種ってあるのかなあ…」。そう感じる人は多いのではないでしょうか。ここでは、花や植物に関わる仕事を、業界の川上から川下のステージごとに区切ってご紹介します。

花・植物に関わる仕事って具体的に何があるの?

花・植物に関わる仕事には、実はとてもたくさんの職種があり、求められるスキルも違います。生産や小売だけでなく、研究・開発、企画・営業、マーケティング・ブランディング、海外企業との連携など、一般企業の職種で経験できないことはないほど、その活躍の場は多彩です。

まずは、花・植物に関わる仕事について、川上から川下へと区切ってご紹介します。

01種苗会社
02花き生産者
03花き市場
04園芸店・フラワーショップ
05ガーデンデザイナー
06フラワーデザイナー
07樹木医
種苗会社写真

種苗(しゅびょう)会社は、植物のタネや苗木を生産者に販売する会社です。優れた性質をもつ草花・花木・観葉植物・野菜などの新品種を開発し、生産者へ安定的にタネや苗木を供給します。

日本で育種した品種を海外へ広めることもあれば、海外の優れた品種を日本に導入して生産者へ紹介・供給することもあります。

また、生産者が上手に育てられるように技術サポートを行ったり、育種した花や植物を広くエンドユーザーに知ってもらうためのマーケティングを担うこともあり、その業務内容は非常に多岐にわたります。生産よりさらに川上に位置する、花・植物業界の出発点ともいえるのが種苗会社です。

育種家になるには?

今はない新しい花色・形・性質をもった新品種を生み出す人を「育種家」と呼びます。育種家になるには種苗会社に就職して研究部署に所属するほか、花きの生産をしながら個人で育種交配をコツコツと続けるケースもあります。実は日本は世界でも類を見ないほど、個人育種家が多い国。日本人ならではの感性から生まれ、世界中で愛されている品種も少なくありません。

育種した品種が世に出るまでは平均10年以上(!)もの長い年月がかかります。それでも、自分が生み出した品種が世界中の人々に愛でられる可能性があると思うと、とてもロマンあふれる仕事ですね。

育種家 坂嵜潮さん
坂嵜潮さん
花き生産者イメージ

花・植物を生産する農家さんを「花き生産者」と呼びます。「花き」とは、観賞用の植物全般を指し、切り花、花壇用の花苗、鉢花、花木類、観葉植物、球根類、さらには盆栽や苔、芝生にいたるまで、私たちの暮らしを彩る観賞用植物はすべて「花き」に含まれます。

花き生産者は名前の通り、観賞用の植物を生産する農家さんのことを指します。大規模な農場でシステマチックな仕組みを取り入れる生産者さんもいれば、自分で育種もしながら、少量でもこだわりの植物を作り続ける職人気質な生産者さんもいます。

花き生産者も高齢化がすすみ、今はまさに世代交代の時。新規就農をする20代や、家業を継いで新時代の花き生産にチャレンジする2代目・3代目の生産者など、生産現場にも新しい感性が求められています。

花き市場イメージ

生産された花・植物を産地から集め、園芸店やフラワーショップ等の小売業者に卸して流通させるのが「花き市場」です。これにより、様々な業種の事業者が効率的に花や植物を仕入れることができます。

花市場では「セリ」と呼ばれるオークションや、市場と買い手が、販売価格や数量について交渉のうえ販売する「相対取引」などさまざまな販売形式を取り入れることで、需要と供給のバランスを取り、適正な価格を形成する役割も担って
また、流通のハブとして、産地から花・植物を集め、各地へ配送する中継地点としても重要な役割を持っています。

多種多様な花・植物が集まる花き市場では、花・植物全般のマーケット動向を俯瞰して把握することができるので、就農前の生産者が研修の場として働くことも多いです。

園芸店・フラワーショップイメージ

普通に暮らす人にとって、最も身近なのが街のお花屋さんではないでしょうか。ひとくくりにお花屋さんといっても、扱う植物によって「園芸店」と「フラワーショップ」にタイプが分かれます。

園芸店は、いわゆる「根付き」の植物をメインに販売しています。花壇苗や鉢花、観葉植物、球根、果樹・花木など、育てて楽しむ苗を販売する小売店です。

一方でフラワーショップは、切り花をメインに扱う花屋さんです。贈り物に花束を買うのはフラワーショップになります。

ただ最近では、園芸店とフラワーショップの境目はどんどん薄れてきており、苗ものも切り花も両方扱うお店も増えていますし、特定の観葉植物に特化したグリーンショップなどもあり、その形態は多様化しています。

エンドユーザーに直接接する仕事なので、植物を育てたり、飾ったりすることが好きで、接客によりその楽しみを広げていきたいと考える人におすすめの職業です。

ガーデンデザイナーイメージ

花・植物を使って装飾をするデザイナーも欠かせない職種です。
ガーデンデザイナーは、施工する庭の気候や環境、住む人の好みなどを考慮して植物を選び、庭をデザインします。植物の知識やデザインセンスはもちろん、施主の要望を的確に汲み取り、施工業者と連携しながら庭の設計をするため、高いコミュニケーション能力も求められます。

フラワーデザイナーイメージ

花束のアレンジメントや、結婚式場やイベント会場などを花や植物で装飾する「フラワーデザイナー」や「グリーンコーディネーター」と呼ばれる人たちは、花・植物の魅力をより輝かせるプロフェッショナルです。

植物の種類や特性に詳しいことや、デザインセンスはもちろん、顧客の要望を的確に汲みとるコミュニケーション能力も、求められる大切な要素になります。

樹木医イメージ

「樹木医」とは、樹木の健康や病気に関する診断や治療を行う専門家のこと。名前の通り樹木のお医者さんです。全国各地の巨樹や古木林等を長く後世に残していくために、病気や害虫による被害などを的確に診断して治療します。樹木医になるためには、(一財)日本緑化センターが実施する樹木医資格審査に合格し、樹木医として登録されることが必要です。

個人で樹木医をメインに仕事をされているケースよりも、造園など企業に属しながら樹木医の知識を生かすケースが多いようです。

このように、植物のタネや苗木を生産する人、新しい品種を開発する人、苗木を育てる人、流通させ販売する人、そして植物や花を使って庭や空間をコーディネートする人、樹木のお医者さんなど、さまざまな役割を担っている人がいます。
生活を豊かにする植物や花は、こうしたさまざまな人たちによって身の回りに届けられています。