大学で博士課程を修了して27歳でハクサンに入社されました。

大学時代はバリバリの理系で、植物の細胞分裂を研究していました。最終的に博士課程を修了したので、それまで培ってきた植物の知識を生かせる開発研究がある企業に絞って就職先を探していました。

ハクサンも最初は開発研究部に興味をもって会社説明会に参加したのですが、そこで品種の権利を守るライセンス部があることを知り、開発研究とは違う形で、自分が長年蓄積してきた植物を見る目を生かせる仕事があるのかと、目らウロコ思いでした。

社員の声04-2

植物をライセンスで守ることで
次の品種を生み出すことができる

ライセンス部は何をする部署なのでしょう。

ひと言でいうと、品種の権利(ライセンス)を守り、管理する部署です。

育種家が生み出して種苗登録された品種は、種苗法によって守られ、勝手に栽培や販売ができないようになっています。言ってみれば植物の特許のようなものですね。

小説や映画等の創作物に著作権があるように、植物にも種苗ライセンスがあり、ライセンス保持者の許諾なく営利生産をして、その価値を損なったり、育種家に不利益をもたらすことがないようになっています。

種苗ライセンスがなければ、誰もが自由に品種を栽培・販売することができてしまい、品種の質や価値が崩れてしまいますし、ライセンスで品種の権利者が明確になっているからこそ、種苗の売上の一部がパテント料として育種家に還元され、次の育種活動への大切な基盤となります。

育種家は苦労して生み出した品種を、きちんとした形で世の中に広めるために、信頼できる種苗会社にライセンスを託しますし、ライセンスを託された種苗会社はその信頼を裏切らないように、品種の価値を管理しながら生産者に種苗を供給して、世の中に広く流通させる努力をします。

社員の声04-3

世界の品種を日本に、日本の品種を世界に。
丁寧なコミュニケーションが仕事の肝

具体的には日々どのような業務を?

ハクサンでは国内外の多くの育種家とネットワークがあるので、海外で開発された素晴らしい新品種を日本で販売できるように育種家と契約交渉を行います。また、反対に国内育種家の優れた品種を海外マーケットへ 紹介し、国内育種家の海外進出のサポートも行います。

いずれの場合も種苗登録をして、違法に栽培・販売がされないように、ライセンス部が管理します。

また、種苗登録の出願業務も担うので、農林水産省とのやり取りも多いです。日によっては農場へ出向き、種苗登録を行う植物の特徴を調査したり、種苗登録の出願のために、農林水産省へ提出する植物の手配を行うこともあります。

海外の種苗会社や育種家とのコミュケーションが多い部署なので、業務も英語でのメールのやり取りが中心。時には海外出張をして直接海外の育種家に会って話をすることもあります。やはり英語力が必要となるので、日頃のメールや海外出張を通じて少しずつ語学力も向上してきていますが、円滑なコミュニケーションができるように努力中です。

ライセンス部ならではの難しさを感じることはありますか?

他部署と少しスタンスが異なりライセンス部では自社ファーストではなく、品種を提供していただいている育種家の側に立って考える必要があることで難しい場面もあります。

具体的には、事前に「これだけ売ります」と育種家へ提示した数量に対して販売量が至っていない時には、社内に対してもう少し売って欲しいと厳しいことを言わなければならない時があります。売ると提示した数量を大きく下回ると、品種提供者からの信頼を失い、次の品種提供も途絶えてしまうので。

そのため、人とのコミュニケーションがとても重要です。社内に対しては、単純に「もっと売ってほしい」とオーダーを出すだけでなく、育種家やライセンス部の立場について説明して理解してもらった上で売る努力を仰ぎますし、同時に社内の他部署の事情や意見も聞いて、品種提供者側にも何が原因で売上が伸びないかを説明して理解してもらい、お互いに歩み寄りながら進めることが大切だと感じています。

ぱっと売って終わりではなく、長期的な信頼を得ることが大切なのですね。

はい。真摯に取引先と向き合い、努力をしていくことで信頼をしてくれて、ハクサン1社に種苗の販売権利を託してくれるようになった時にはとてもうれしいですね。

ひとつの新品種が苗として店頭に並ぶまでには、種苗登録出願や栽培検証などで少なくとも3年はかかります。また、種苗登録にかかるコストも安くはありません。だからこそ、品種の価値を守りながらしっかりと販売実績を残し、育種家から長く信頼されることがなにより重要です。

社員の声04-4

日本と海外で異なる博士号への温度感
博士号取得者の活躍モデルを目指して

話は変わりますが、博士号まで取得された方の就職事情はどのような感じなのでしょう?

日本と海外では、博士号に対する見方が大きく違うと思います。

日本では残念ながら、博士号を持つ人材の企業登用が進んでいません。博士号となると企業側も条件面でハードルが高くなってしまうので、求人にそこまでのスペックは必要ないと判断されることが多く、就職事情は厳しいのが実情です。なので、日本では修士課程を終えた時点で企業に就職する人がほとんどです。

一方で海外では、博士号に相当する「Ph.D.」の人材を企業が取り合っています。もちろんその分仕事での実績をシビアにジャッジされることも多いのですが、リスペクトをもって接してくれますので、海外とやり取りする際には、自分もメールの署名に「Ph.D.」と記載するようにしています。 これは言い過ぎかもしれませんが、今の日本の就職状況だと、博士課程まで進む人が少なくなり、長期的に見て海外企業との競争力に開きがでてしまうのでは……とも思います。その意味でも、ハクサンに出会えたことは自分にとっても大きかったですし、博士号取得者を積極的に登用する日本企業の活躍モデルになればいいなと思います。

社員の声04-5

実際に飛び込んでみた植物業界の印象はどうでしょう。

自分はマイペースで緊張しやすいタイプなのですが、植物の業界はやはり生き物や土を相手にする仕事だからか、総じておおらかで優しい人が多く、せかせかしていないので自分に合っていると思います(笑)。

オフィス環境でいえば、最近はフリーデスク化が進み、パソコンを持って好きなデスクで仕事ができるので、誰とでも気軽に話すことができます。オフィス緑化や隣接するガーデンもあり、植物と触れ合ってリラックスできる場面も多いですね。

ライセンス管理の仕事は登山と似ている?
こつこつ登りつづけた先に見える景色とは

仕事とプライベートは両立できていますか?

テレワークも週に数回行うことが推奨されていて、ライフスタイルに合った働き方ができています。

プライベートでは登山や写真撮影が趣味なので、今年の目標は屋久島か富士山に行くこと! 山登りはこつこつ登りつづけて、頂上にたどり着いた時に大きな喜びが待っていまよね。ライセンス部の仕事もどこか似ているかもしれません。素晴らしい新品種を見つけて、何年後かにユーザーの手にわたる日のために、あきらめずに粘り強く取り組んでいく。こつこつ登りつづけた先に、自分が担当した品種が園芸売り場に並ぶ景色が待っている。そんな景色を目指して一歩一歩、歩みを進めていきます!

社員の声04-6