秋になると園芸店に並ぶたくさんのシクラメンに、心が華やぎます。その繊細な花姿は、昔から多くの日本人に支持され、愛され続けてきました。日本でのシクラメンの開発はめまぐるしく、独自の文化を築いてきました。そしてまさしく今、そのシクラメンに大きな革命が起きようとしています。

シクラメンの原種の種類

シクラメンはサクラソウ科シクラメン属の多年草球根植物で、別名:カガリビバナ、ブタのまんじゅうとも呼ばれています。サクラソウ科シクラメン属の中には約23の野生種がありますが、園芸品種のほとんどはパーシカム種を改良し育成されたシクラメンになります。

パーシカム種(Cyclamen persicum)

日本で栽培されているシクラメンのほとんどが、パーシカム種の改良品種になります。

ヘデリフォリウム種(Cyclamen hederifolium)

ヘデリフォリウム種は、南ヨーロッパやトルコ原産のシクラメンで、秋に花を咲かせるためアキサキシクラメンとも呼ばれています。花は小さめですが、原種のシクラメン中でも花付きが良く、ごく少量ですがパーシカム種に次ぐ流通があります。

コウム種(Cyclamen coum)

コウム種は、アジア、ギリシャ原産の丸い葉のシクラメンで、早春に葉間から数輪の花を咲かせます。園芸品種としての流通は極めて少ないのですが、野性味あふれた花姿をし、耐暑性にも耐寒性にも優れた性質を持ちます。

シクラメンの歴史

シクラメンの歴史は古く、その起源は古代の地中海沿岸地域にさかのぼります。

シクラメンの歴史
医療や香水として活躍したシクラメン

シクラメンは、古代ギリシャやローマ時代から知られており、医療用途や香水の原料として使用されていました。中世ヨーロッパでもシクラメンは薬草として利用され、その根は特に下剤として用いられました。

シクラメンアルーレ
観賞植物として慕われたシクラメン

16世紀には、ヨーロッパで観賞植物としての栽培が始まり、「アルプスのスミレ」と呼ばれ、広まっていきました。

シクラメンの歴史
白やピンクの花びらを鮮やかな色で縁取取ったフリンジ咲きのビクトリア

19世紀に入ると、シクラメンの花の形や色の多様化が進み、1870年代には大輪のシクラメンが、 1906年には、 フリンジ種の代表であるビクトリアが誕生します。

日本でのシクラメンの歴史

シクラメンが日本に初めてやってきたのは明治時代、ヨーロッパから日本に初めて持ち込まれました。その可愛らしい草姿が人気を博し、大正時代には園芸植物として一般家庭にも広がりを見せました。

第一次シクラメンブーム

シクラメンの歴史
日本で次々と新品種が誕生した第一次ブーム

1960年代から1970年代、日本国内でシクラメンの品種改良が本格化し、多くの新しい品種が登場しました。鮮やかな色や新しい花の形のシクラメンが開発され、消費者を魅了する品種が増えました。第一次シクラメンブームの到来です。それまで、赤色が大部分を占めていたシクラメンですが、パステル系のカラーが次から次へと開発されました。八重咲き品種や、芳香性シクラメンと魅力的な品種が次々と開発されました。

第ニ次シクラメンブーム

それまで、シクラメンは室内で鑑賞を楽しむ植物として親しまれていたのですが、ヨーロッパよりも温暖な気候である日本において新しいシクラメンの楽しみ方が確立しました。

シクラメンの歴史
屋外で育てられるガーデンシクラメン

1996年 耐寒性の強いガーデンシクラメンの誕生により第二次シクラメンブームが起きます。それまで室内で大切に育てられていたシクラメンが、屋外で寄せ植えなどでも楽しめるようになり、シクラメンの可能性が一気に拡がりました。お庭で楽しむシクラメンが、日本独自の文化として広まっていったのです。

そこからも、花色、花の咲き方、芳香性、葉模様など、多様なシクラメンの開発が進んでいきます。

ガーデンシクラメン ベラノ

耐寒性にも耐暑性にも優れており、その育てやすさから世界で一番流通しているガーデンシクラメンです。初めてシクラメンを育てる方や、シクラメンに苦手意識をもっている方に是非試していただきたい品種になります。

ガーデンシクラメン ピカソ

ベラノに次ぐ世界トップセラーのガーデンシクラメンです。関東以西の暖地であれば霜さえ咲ければ屋外でも冬越し可能!シルバーリーフが美しいミニタイプで、花が拡がるように咲き誇ります。

ガーデンシクラメン メティス

シクラメンが最もかかりやすい病気の1つ灰カビ病の耐病性に優れたミニタイプのガーデンシクラメンです。花もちがよく、霜に気をつければ関東以西の暖地でガーデンシクラメンとして活躍します。

第三次シクラメンブーム

そして、シクラメンの育種技術が革新的に発展を研げます。これまで安定した品質のタネ(F1種)を開発するのに、10年以上もの歳月と高額な開発コストがかかり、その間に世の中のトレンドが変わるリスクがありました。そのため、特徴的なシクラメンの開発に着手するのは難しい現実がありました。

種苗会社は、育種プロセスを見直す必要がありました。何度も育種を重ねることで、無駄になる可能性が高い工程を排除し、効率的に育種サイクルを回す論理的なプロセスを少しずつ確立してきました。ドラマチックなシクラメンが、今までより短期間で商品化する技術が完成しつつあります。

シクラメンイリュージア
上向きシクラメン イリュージア

こうして生まれたのが、シクラメンの常識を覆す上向きに花が咲くシクラメン イリュージアです。F1種として開発されたこのシクラメンは、今までにない特徴を持ちながらも、気軽に手に入る時代が到来しました。

育種技術の進歩により、シクラメンは新しい時代を迎え、第三次シクラメンブームが巻き起ころうとしています。

これからも、シクラメンの進化から目が離せません。これから今まで実現不可能と言われてきたセンセーショナルなシクラメンが、次々と世の中に送り出されていきます。シクラメンの歴史が変わるこの瞬間を、どうぞお見逃しなく!

歴史を変えたシクラメン

イリュージア

分類:サクラソウ科シクラメン属

フラワートライアルジャパンで、フラワートライアルアワード2023植物部門のGold賞を受賞した画期的なシクラメン。従来のシクラメンとは異なり、ピンク色の花が上向きで咲く姿はまるで桜の花のよう。世界に先駆けて2023年に日本で先行販売され、2024年から本格販売開始します。こんな特別なシクラメンもF1種で商品化される夢のような時代の幕開けです。

フレグラントシクラメン アブソリュドゥモレル

分類:サクラソウ科シクラメン属

シクラメン アブソリュドゥモレルは、世界唯一のビクトリア咲きの芳香性品種です。(ビクトリア咲きとは、ゆるやかな波の打つフリンジ咲きの花の咲き方を呼びます。)咲く花すべてがエレガントで香り高く、改めて安定的な供給ができるF1種のすごさを実感するシクラメンです。

シクラメン ジックス

分類:サクラソウ科シクラメン属

鮮やかな色の花弁と白い花のような形のがくとのコントラストが美しい品種で、傘をさしたような花姿が印象的です。F1種として誕生したことにより、ワクワクするような珍しいシクラメンがご家庭でも楽しめるようになりました。

シクラメン アロハ シャインレッド

分類:サクラソウ科シクラメン属

貝殻のように波打つ花弁とバイカラーがチャームポイントのシクラメン アロハ シャインレッド。丸みある花びらは、シクラメンの原型とは異なりとても特別な形になりますが、F1種として商品化することに成功しました。耐寒性に優れており、ガーデンシクラメンとしても楽しめます。

シクラメン クレヨン

分類:サクラソウ科シクラメン属

シクラメン クレヨンはシクラメンに苦手意識がある方でも育てやすいコンパクトサイズのシクラメンです。クレヨンで描いたようなストライプ模様と淡く美しいグラデーションが特徴で、F1種により安定した品質で育てやすいシクラメンが大量生産できるようになりました。

まとめ

毎年新しい品種がたくさん登場しているシクラメン。花色や花姿、全体のシルエットなどもさまざまで、「いままで見たことがない!」という珍しい品種が次々と開発されています。これから巻き起こる第3次シクラメンブーム!

ハクサンは、植物を愛して40年以上!毎日が楽しくなるワクワクするシクラメンを、たくさん皆さんにお届けしています。ぜひお気に入りのシクラメンを見つけて、上手にお手入れしながら長く楽しんでくださいね。