パスポートの表紙や皇室の紋章としても有名な菊。平安時代に後鳥羽上皇が菊を愛したことから、高貴な花として大切に扱われるようになりました。そんな日本人にとって昔から馴染み深い菊がヨーロッパに渡り、マムと呼ばれ世界中に愛されていることをご存知でしょうか。

ここでは、そんなマム(洋菊)の花言葉や魅力、種類や育て方などをご紹介します。

マム(洋菊)ってどんな花?

マム 洋菊とは

マムとは、もともとは日本の菊が原種でヨーロッパで誕生しました。和名では、洋菊とも呼ばれていますマムというと「お母さん」を想像する方も多いと思いますが、学名である「Chrysanthemum(クリサンセマム)」を短縮してマムと呼ばれるようになりました。

「お母さん」という意味のマムと掛け合わせて、オーストラリアなどの南半球ではちょうど開花期にあたることから母の日のプレゼントの定番にもなっています。

菊は、秋分の日を境に日照時間が短くなると花芽(はなめ)を形成して花を咲かせる短日(たんじつ)植物です。菊は開花期によって夏菊・夏秋菊・秋菊・寒菊に分けられますが、マム(ポットマムやガーデンマム)は秋に花が咲く秋菊になります。

夏菊日本で6~7月に開花する菊で、量的(相対的)短日植物になります。長い日照時間でも花芽をつけますが、日照時間が短いとさらに早く開花する性質を持ちます。
夏秋菊日本で7~9月に開花する菊で、花芽形成に必要な日長(限界日長)より日が短いと花芽を形成する質的短日植物になります。
秋菊日本で10~11月に開花する菊で、限界日長が12~15時間で自然開花する短日植物になります。
寒菊日本で12月以降に開花する菊で、限界日長が11時間以下で自然開花する短日植物になります。

短日植物ではあるのですが、近年は開花調整が行われ、菊の切り花が一年中手に入るようになりました。

ポットマムとは

ポットマムとは、1950年代にアメリカで開発された鉢植え用にコンパクトに開発された園芸品種になります。一斉に花が咲き誇る姿はとてもインパクトがあり、今では世界中で人気のある秋の代表的なお花の1つになっています。

ガーデンマムとは

ヨーロッパで誕生したガーデンマムはもともとは日本の菊が原種で、寒さにも強く屋外で冬越し可能なのが特徴です。鮮やかな花色とこんもり咲く花姿が魅力的で、世界中でとても人気があります。ボリュームある株を、ローメンテナンスで何年も育てられるのも人気の秘密になります。

スプレーマムとは

スプレーマム

アメリカで誕生したスプレーマムも日本の菊が原種で、1つの茎にたくさんの花を咲かせる洋菊のことを呼びます。多花性でカラフルな品種が多く切り花やドライフラワーとして人気があります。

スプレーマムに対して、芽を取り除き1つの枝に1輪の花を咲かせるように仕立てたものをディスバットマム(Dis:取り除く、Bud:芽)と呼ぶこともあります。

また、菊は花の大きさごとに「大輪菊」「中輪菊」「小輪菊」と分けられることもあります。

マム(洋菊)の花言葉

ガーデンマム ジジ ミックス植え

一般的な菊の花言葉は「高貴」「高尚」「高潔」などが挙げられますが、マム(洋菊)には「あなたを愛しています」「清らかな愛」といった愛おしい花言葉もあります。

マム(洋菊)の花色花言葉
赤色愛情、あなたを愛しています
ピンク色甘い夢
白色誠実な心、ご冥福をお祈りします
黄色長寿と幸福、わずかな愛
紫色私を信頼してください、夢が叶う

1つの茎にたくさんの花を咲かせるスプレーマムは、その花のつき方から「気持ちの探り合い」という意味深な花言葉を持つとも言われています。プレゼントする際には、メインの花にならないように気をつけましょう。

マム(洋菊)の誕生花

ポットマムサンティ

マム(菊)を誕生花とするのは、9月9日、10月1日、10月27日、11月3日、11月23日、11月27日、12月1日、12月13日です。

特に9月9日は、3月3日の桃の節句や5月5日の端午の節句で知られている五節句のひとつで、重陽(ちょうよう)の節句になります。菊の節句と呼ばれることもあります。菊には「邪気を払う力がある」と考えられており、ちょうどこの時期に開花する菊を飾って邪気を払い、健康長寿を祈る特別な日になります。

マム(洋菊)の基本情報

開花期秋(9~11月頃)
分類キク科キク属
学名Chrysanthemum ラテン語で「chrysos(黄金)」の「anthemon(花)」を意味します。
和名ヨウギク
原産国ヨーロッパ、アメリカ
もともとは中国から日本に渡ってきたものであることから、中国や日本が原産国と言われることもあります。
植物の種類耐寒性多年草 品種によって様々あります。
最低温度ー15℃ ~ 0℃ 品種によって差があり、寒冷地では冬は寒さ対策が必要になります。耐寒性に優れたマムをお探しの場合は、ガーデンマムを選んでください。
耐寒性ゾーン7b~9a 品種によって差があります。
置き場所日なた
花色赤、ピンク、白、黄色、オレンジ色、緑色、褐色など

マム(洋菊)の魅力

ハロウィン マム

株を覆い尽くすほどの花が一斉に咲く花姿は圧巻!自然に形よい株にまとまり、赤・黄・オレンジ・白などの秋らしい鮮やかなお庭を演出します。何年も楽しむことができる多年草で、ローメンテナンスで(地植えであれば根づけば植えっぱなしで大丈夫!)ありながら、驚きのパフォーマンスを魅せてくれます。

ハロウィンには、配色も株姿もジャックオーランタンとの相性抜群!紅葉に色づく日本のお庭に自然に調和します。たいへん花もちもよく、長く楽しめるのも魅力です。

マム(洋菊)の花のつくり

マム(洋菊)や和菊などのキク科の花は、小さい花が複数集まって1つの花を形成します。

マム菊の花のつくり

花のつき方を花序と言いますが、キク科は、複数の舌状花が集まって 一つの花になっている頭状花序の植物です。この部分は本来花ではないため、頭花(とうか)と呼んでいます。

頭花は、筒状花(とうじょうか)/管状花(かんじょうか)舌状花(ぜつじょうか)の2種類の小花から形成されます。

筒状花/管状花頭状花序の中心にあり、 筒状(管状)の花冠をもつ花のことです。
舌状花筒状花/管状花の周囲にあり、舌のような形になっているものです。

マム(洋菊)の学名 キクの学名の変遷

マム(洋菊)の学名でもあるキクの学名に、クリサンセマム属と記載があったりデンドランセマ属と記載されていたり、どちらが正しいのか疑問になる方もいると思います。それは、キクの学名が何度も変更になったことが原因です。

1
1989年 クリサンセマム属に

フランス人のラマチュエルは、東洋から伝わってきたキクをシュンギク(学名:クリサンセマム属コロナリウム科(Chrysanthemum coronarium))と同じ属とみなし、ラテン語で「chrysos(黄金)」の「anthemon(花)」を意味するクリサンセマム属と定義しました。また、キクの葉の形がクワ(mori)の葉(folium)に似ていることから、学名をクリサンセマム モリフォリウム (Chrysanthemum morifolium) と名付けました。

2
その後 デンドランセマ属に

シュンギク(春菊)はその後デンドランセマ属に変更になります。ラマチュエルは、それに併せて東洋原産のキクの属名もデンドランセマ属に変更することにしました。そこから数年の間キクは、デンドランセマム属として世の中に知られていきます。ただ、英名では昔から変わらずクリサンセマムの名で呼ばれていました。

3
1995年 再びクリサンセマム属に

英国の植物学者から英名のクリサンセマムに戻す動きがあり、1995年のセントルイスでの国際植物学会会議において、キクの学名は再びクリサンセマム モリフォリウム (Chrysanthemum morifolium) に変遷したのです。

そのため今日においては、キクはクリサンセマム モリフォリウム (Chrysanthemum morifolium) が正しい学名とされています。

マム(洋菊)の種類

マム(洋菊)は様々な花の咲き方があり、その咲き方によって分類されることもあります。

エクセレントマム_ピコ
一重咲き
花びらが一重で、花の中心に花芯が見えるシンプルな咲き方になります。
アネモネ咲き マム菊
アネモネ咲き
花の中心がアネモネの花のように盛り上がって咲く咲き方で、別名:丁子咲きとも言われます。
ポットマムカクテルマム
スパイダー咲き
細長い花びらが蜘蛛(スパイダー)の巣のように放射状に広がる咲き方で、別名:管(くだ)咲きとも言われています。
ポットマムカクテルマム
デコラ咲き
花びらが八重で、花の中心が見えないほど花びらが詰まっている咲き方です。デコラとはdecorative(英語で装飾的を意味します)の略になります。
ポンポン咲き マム菊
ポンポン咲き
花びらが八重で、こんもりとした半球状になる咲き方です。
スプーン咲き 風車咲き
スプーン咲き
一重咲きで、花弁の花の中心部に近い部分が筒状で、先端がスプーンのようなユニークな花びらをしている咲き方です。別名:風車咲きとも言われています。

マム(洋菊)の育て方

マム(洋菊)の植えつけ

植えつけ時に元肥を十分に施し、害虫防除のために殺虫剤を撒いておきましょう。

初めてPWの苗を手にした方へ

買ってきた花苗(9~10.5㎝ポット苗)は初めは二回り大きな15㎝~20㎝位の鉢に植えつけ、根が張ってきたら30㎝前後の鉢に植え替えましょう。

根が張ってくると、地上部が大きくなり、鉢底穴から根が見えたり水が乾きやすくなる症状がみられます。

マム(洋菊)の日当たり

マム(洋菊)は、一年中日当たりの良い場所で育てましょう。1日6時間以上の日光があたる場所が最適です。

マム(洋菊)の水やり

鉢植えで育てている場合は、鉢の土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出るまでたっぷりとあげてください。

初めてPWの苗を手にした方へ

目安として春~秋は1日1回。冬は、1週間に1回程度鉢の土の乾き具合を確認してください。

マム(洋菊)の肥料やり

初めてPWの苗を手にした方へ

植えつけ時に元肥を十分に施した後、生育期は、緩効性の置き肥を1ヵ月に1回程度、液体肥料(500~1,000倍に希釈したもの)を1〜2週間に1~2回程度あげてください。

冬は生長が鈍るため、肥料はお休みします。

マム(洋菊)の切り戻し

ガーデンマムの蕾摘み

秋に、花が咲き終わったら、株元5cm程度まで切り戻します。

さらに夏になる前に一度摘心し、株を充実させ花芽を増やします。

マム(洋菊)の夏越し

マーガレットの夏越し

マム(洋菊)は、もともと中国や日本原産であることもあり、直射日光下でも高温多湿な日本の夏を難なく乗り越えます。耐暑性に優れた頼もしい植物です。

マム(洋菊)の冬越し

マム(洋菊)は日本のほとんどの地域で、屋外で冬越し可能です。

寒冷地の場合は、冬は軒下などに移動させたり、腐葉土などで株元を覆ったり不織布などを被せて防寒対策をすると安心です。

マム(洋菊)の増やし方

マム(洋菊)は挿し木(挿し芽)で簡単に増やすことができます。5~6月頃、切り戻した茎を10cm程にカットし、2時間ほど吸水させてから清潔な挿し木用の土に挿しておきます。大きな葉は半分程度にカットして蒸散を抑えましょう。花が付いている場合は、花をカットしましょう。根づくと新芽が伸びてくるので、培養土に移植します。

挿し木や挿し芽は自宅で楽しむだけにしてください

挿し木や挿し芽にして増やしたブランド苗を、無断で人に譲ったり売ったりすることは「種苗法」という法律で禁止されています。生産者や品種開発者を守るためにも、増やした苗は人に譲ったりせずに、自宅で楽しむだけにしてくださいね。

マム(洋菊)の日よけ

マム(洋菊)は短日植物です。夜間に人工灯の影響を受けると開花しない場合があります。そのため秋になったら、夜間に外灯や家の明かりがあたらない場所で育てましょう

マム(洋菊)のよくある質問

Q
春に蕾ができたのですが、そのまま花を楽しんでもいいですか。
A

そのまま花を楽しんでもいいですが、まれに秋に開花しない場合もあります。秋にたくさんの花を咲かせるためには、早めに蕾を摘むことをおすすめします。

Q
秋に咲く花がピンク色になってきたのですが、問題ないでしょうか。
A

寒さによりアントシアニン(赤紫系の色素)の量が増えて色がつくことや、花が咲き進んで赤紫色を帯びることがあります。自然現象ですので、特に問題はありません。そのままお楽しみください。

まとめ

菊と聞くと仏花をイメージする方も多いかもしれませんが、マム(洋菊)はそのイメージを一掃するほど魅力的な植物に進化しました。

カラフルな花色とボリュームある花姿で、世界各地で人気があります。是非今年の秋は、マムを取り入れて秋のお庭を楽しんでみませんか。販売時期や購入できるお店は、以下のホームページでご確認ください。