中学校の時に理科で習った「メンデルの遺伝の法則」が、ガーデニングや農業においてどれだけ役立つかご存知でしょうか。シクラメンなどの植物でよく耳にする「F1種」というのは、このメンデルの遺伝の法則に基づいた技術によって生まれたものです。

メンデルの法則とは

オーストリアの修道院の牧師であったグレゴール・メンデルは、遺伝の仕組みについて3つの基本的な法則を発見しました。

1
優劣の法則(law of dominance)

ある特定の形質を持つ親同士を交配させると、第一世代(F1世代)では優性の形質だけが現れ、劣性の形質は現れません。この現象を優劣の法則と呼びます。

2
分離の法則

F1世代の個体同士を交雑させると、第二世代(F2世代)で劣性の形質が再び現れます。F1世代で見られなかった遺伝的な要素は失われたわけではなく、F2世代に再び出現します。この法則により、遺伝の要素は次の世代に継承されることが明らかになりました。F2世代での形質の出現比率はおおよそ3:1になります。

3
独立の法則(law of independence)

2対以上の異なる形質の遺伝様式に関する法則が独立の法則です。メンデルは、2対(dihybrid cross)またはそれ以上の形質をもつ交配種についても分析し、異なる対立遺伝子はそれぞれ独立して分配されることを発見しました。

F1種と固定種

市場に出回っている植物の種は、大きく分けて固定種F1種のニ種類があります。

固定種とは

固定種は、自然界で生まれた遺伝情報をそのまま保持している種です。このため、特定の土地の気候や環境に適応する能力が高いとされています。形状や収穫時期にばらつきがありますが、予期せぬバリエーションに富んだ生体に出会えるような魅力もあります。

F1種とは

シクラメン室内で上手に育てるには

F1種とは、雑種第一代(First Filial Generation)の略です。 「雑種第一代」は、異なる品種が交雑して産まれた第一世代の品種のことです。メンデルが発見した「優性と劣性の品種を交配して採種した種には、必ず優性の形質を持った種ができる」という「優劣の法則」を利用した技術で、安定した優性の種を生産する画期的な植物の種になります。

さらには、植物の交雑によって採種された種は、両親よりも優れた形質を持つ「ヘテロシス」という現象が起こり、固定種よりも生育旺盛であるものが多いと言われています。

安定した収穫量や均一な品質を保つため、F1種は現代農業において重要な役割を果たしています。

F1種の開発が難しい理由

しかし、安定したF1種を開発するには約10年もの年月と膨大な開発コストがかかります。

シクラメン室内で上手に育てるには

特徴のある植物のF1種を開発しようと着手しても、開発中に世の中のトレンドやとりまく環境が変わってしまい、途中で諦めざるを得ない状況に陥ることも珍しくありません。

また、長年に渡って資金繰りや人員確保が必要になり、リスクが高く安易に着手できないのも現実です。

せっかくF1種の開発に成功しても、市場で支持されることがなければ開発費を回収することは難しく、種苗会社には綿密な計画と継続的な体力が求められます。だからこそ、F1種というのは農業の発展において欠かせないすごい技術だと言えるのです。

安定した品質を誇るF1種のシクラメン

イリュージア

分類:サクラソウ科シクラメン属

フラワートライアルジャパンで、フラワートライアルアワード2023植物部門のGold賞を受賞した画期的なシクラメン。従来のシクラメンとは異なり、ピンク色の花が上向きで咲く姿はまるで桜の花のよう。世界に先駆けて2023年に日本で先行販売され、2024年から本格販売開始します。こんな特別なシクラメンもF1種で商品化される夢のような時代の幕開けです。

フレグラントシクラメン アブソリュドゥモレル

分類:サクラソウ科シクラメン属

シクラメン アブソリュドゥモレルは、世界唯一のビクトリア咲きの芳香性品種です。(ビクトリア咲きとは、ゆるやかな波の打つフリンジ咲きの花の咲き方を呼びます。)咲く花すべてがエレガントで香り高く、改めて安定的な供給ができるF1種のすごさを実感するシクラメンです。

シクラメン ジックス

分類:サクラソウ科シクラメン属

鮮やかな色の花弁と白い花のような形のがくとのコントラストが美しい品種で、傘をさしたような花姿が印象的です。F1種として誕生したことにより、ワクワクするような珍しいシクラメンがご家庭でも楽しめるようになりました。

シクラメン アロハ シャインレッド

分類:サクラソウ科シクラメン属

貝殻のように波打つ花弁とバイカラーがチャームポイントのシクラメン アロハ シャインレッド。丸みある花びらは、シクラメンの原型とは異なりとても特別な形になりますが、F1種として商品化することに成功しました。耐寒性に優れており、ガーデンシクラメンとしても楽しめます。

シクラメン クレヨン

分類:サクラソウ科シクラメン属

シクラメン クレヨンはシクラメンに苦手意識がある方でも育てやすいコンパクトサイズのシクラメンです。クレヨンで描いたようなストライプ模様と淡く美しいグラデーションが特徴で、F1種により安定した品質で育てやすいシクラメンが大量生産できるようになりました。

まとめ

毎年新しい品種がたくさん登場しているシクラメン。花色や花姿、全体のシルエットなどもさまざまで、中には「いままで見たことがない!」という珍しい品種も出ています。

ハクサンは、植物を愛して40年以上!毎日が楽しくなるワクワクするシクラメンを、たくさん皆さんにお届けしています。ぜひお気に入りのシクラメンを見つけて、上手にお手入れしながら長く楽しんでくださいね。